コンラッドライズはインド洋南部に存在する高まりである。これまでの多くの研究が、コンラッドライズを約9000 万年前に活動を開始したホットスポットと考えてインド洋 の構造発達史に組み入れている(Müller et al., 1993)が、対応するホットスポットトラックが不確定であり、ホットスポットではないとする研究結果(Courtillot et al., 2003) もある。また、岩石学データは1980 年代に行われた一度の航海で得られた十数個の岩 石に限られ、化学組成からケルゲレン海台に似たマントル由来とされている(Borisova et al., 1996)が、年代測定や同位体分析は行われていない。これまでに、学術研究船白鳳 丸KH-07-4 航海、KH-10-7 航海、KH-16-1 航海、KH-19-1 航海により地球物理観測とド レッジによる試料採取が行われてきた。コンラッドライズ産の火山岩は塊状の溶岩、多孔質溶岩、火山岩角礫岩として産出し 主成分組成ではアルカリ玄武岩から強アルカリ粗面岩に区分され、非アルカリ岩の産出 は少ない。斑晶鉱物組み合わせはMg#が60 より高い試料ではカンラン石と単斜輝石で あり、60 より低い試料では単斜輝石、角閃石、黒雲母である。斜長石斑晶が含まれて いないことが特徴的である。しばしば、ゼノリスを含む。微量元素組成では、非アルカリ岩を除き、LREE などの液相濃集元素に富み、インド洋の海山や海台と似た組成を示 すが、微量元素比ではマリオン島やクロゼ諸島、ケルゲレン海台とは異なる。同位体組 成は、アルカリ岩については87Sr/86Sr が0.7045~0.7052、eNd が-0.9~-3.3、206Pb/204Pb が 17.7~18.6、207Pb/204Pb が15.52~15.56、208Pb/204Pb が37.9~38.8 となっている。D8/4 およびD 7/4 はそれぞれ、約70 と10 未満であるが、東側のレナ海山産の試料はD 8/4 が90、D 7/4 が12~13 とDupal 異常とみなせる値となっている。これらの特徴は、微量元素比 と同様に、マリオン島やクロゼ諸島、ケルゲレン海台とは異なる特徴である。類似した 特徴を持つ火成岩体としては、マダガスカル島のアルカリ岩(Mahoney et al. 1991)や Afanasy-Nikitin ライズ(Mahoney et al., 1996; Borisova et al., 2001)が挙げられる 地磁気観測の結果に基づくテクトニクスの復元(T. Sato et al., 準備中)に基づけば、 コンラッドライズがデルカノ海膨やマダガスカル海台と一体となっていた時期がある と推定される。この時期にはAfanasy-Nikitin ライズも近傍に位置していたと考えられ、 同一の起源を持つ岩体の可能性が示唆される。
Geochemical characteristics of volcanic rocks from Conrad Rise, southern Indian Ocean: Insights into the origin of the plateaux at the Indian Ocean
Christine Meyzen
2019
Abstract
コンラッドライズはインド洋南部に存在する高まりである。これまでの多くの研究が、コンラッドライズを約9000 万年前に活動を開始したホットスポットと考えてインド洋 の構造発達史に組み入れている(Müller et al., 1993)が、対応するホットスポットトラックが不確定であり、ホットスポットではないとする研究結果(Courtillot et al., 2003) もある。また、岩石学データは1980 年代に行われた一度の航海で得られた十数個の岩 石に限られ、化学組成からケルゲレン海台に似たマントル由来とされている(Borisova et al., 1996)が、年代測定や同位体分析は行われていない。これまでに、学術研究船白鳳 丸KH-07-4 航海、KH-10-7 航海、KH-16-1 航海、KH-19-1 航海により地球物理観測とド レッジによる試料採取が行われてきた。コンラッドライズ産の火山岩は塊状の溶岩、多孔質溶岩、火山岩角礫岩として産出し 主成分組成ではアルカリ玄武岩から強アルカリ粗面岩に区分され、非アルカリ岩の産出 は少ない。斑晶鉱物組み合わせはMg#が60 より高い試料ではカンラン石と単斜輝石で あり、60 より低い試料では単斜輝石、角閃石、黒雲母である。斜長石斑晶が含まれて いないことが特徴的である。しばしば、ゼノリスを含む。微量元素組成では、非アルカリ岩を除き、LREE などの液相濃集元素に富み、インド洋の海山や海台と似た組成を示 すが、微量元素比ではマリオン島やクロゼ諸島、ケルゲレン海台とは異なる。同位体組 成は、アルカリ岩については87Sr/86Sr が0.7045~0.7052、eNd が-0.9~-3.3、206Pb/204Pb が 17.7~18.6、207Pb/204Pb が15.52~15.56、208Pb/204Pb が37.9~38.8 となっている。D8/4 およびD 7/4 はそれぞれ、約70 と10 未満であるが、東側のレナ海山産の試料はD 8/4 が90、D 7/4 が12~13 とDupal 異常とみなせる値となっている。これらの特徴は、微量元素比 と同様に、マリオン島やクロゼ諸島、ケルゲレン海台とは異なる特徴である。類似した 特徴を持つ火成岩体としては、マダガスカル島のアルカリ岩(Mahoney et al. 1991)や Afanasy-Nikitin ライズ(Mahoney et al., 1996; Borisova et al., 2001)が挙げられる 地磁気観測の結果に基づくテクトニクスの復元(T. Sato et al., 準備中)に基づけば、 コンラッドライズがデルカノ海膨やマダガスカル海台と一体となっていた時期がある と推定される。この時期にはAfanasy-Nikitin ライズも近傍に位置していたと考えられ、 同一の起源を持つ岩体の可能性が示唆される。File | Dimensione | Formato | |
---|---|---|---|
Sato_GSPMeeting_2019_ jap.pdf
accesso aperto
Descrizione: Abstract GSP meeting 2019
Tipologia:
Abstract
Licenza:
Accesso gratuito
Dimensione
126.35 kB
Formato
Adobe PDF
|
126.35 kB | Adobe PDF | Visualizza/Apri |
Pubblicazioni consigliate
I documenti in IRIS sono protetti da copyright e tutti i diritti sono riservati, salvo diversa indicazione.